2024.01.30
歯並び・矯正
歯の表側に矯正器具を装着する表側矯正は有名ですが、歯の裏側に矯正器具を装着する裏側矯正については詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
裏側矯正には、見た目で矯正器具が目立たないだけでなく、ほかにもさまざまなメリットがあります。
この記事では、通常の矯正との違い、裏側矯正のメリット、裏側矯正がおすすめできない例について解説します。
Contents
裏側矯正とは、矯正器具を歯の裏側に装着して治療をおこなう矯正方法です。
器具自体は、矯正器具を歯の表側に装着して矯正する表側矯正と同じく、ブラケットとワイヤーを使用します。
具体的には、歯の裏側にブラケットを装着し、ブラケットにワイヤーを通すことで、力を加えて歯を動かす仕組みです。
また、裏側矯正は舌側に矯正器具を装着するため、舌側矯正とも呼ばれています。
裏側矯正には、以下のような5つのメリットがあります。
続いて、それぞれのメリットについて解説します。
裏側矯正は、歯の裏側に矯正器具を装着するため、矯正器具が目立ちづらく、周りに気づかれずに歯列矯正ができることが特徴です。
職業柄、矯正器具を目立たせたくない場合や、写真撮影を控えている場合などでも、矯正器具を気にせずに矯正治療ができます。
裏側矯正は、とにかく矯正器具を目立たせたくない方におすすめの矯正方法です。
矯正器具を装着していると、矯正器具の周りに歯垢や食べかすがたまりやすくなるため、虫歯や歯周病になりやすいです。
しかし、舌の舌には唾液を分泌する組織があり、歯の裏側では唾液が循環しています。
唾液が歯垢や食べかすを洗い流したり、唾液の殺菌作用や再石灰化作用がはたらいたりするため、表側矯正よりも裏側矯正の方が虫歯や歯周病のリスクが低くなります。
ただし、歯磨きを怠ってしまうと、虫歯になるリスクは高まるため、日々のケアを心がけましょう。
裏側矯正では、歯の裏側に器具を装着するため、歯の裏側に舌を押し当てる癖を抑える効果が期待できます。
口を閉じているときの舌は、上の歯の付け根からすこし奥に下がった位置にあるのが正常ですが、舌の癖がある場合は舌が歯の裏側にあり、舌の力で前歯を押すことで出っ歯になってしまいます。
そのため、舌の癖を直さないと、歯並びを整えたとしても後戻りするリスクが高まります。
裏側矯正の場合、後戻りのリスクになりうる舌の癖を直せる点もメリットといえるでしょう。
裏側矯正では、矯正器具を歯の裏側に装着するため、唇に直接器具が当たらず、口元をぶつけた際に口腔内が傷つくリスクが下がります。
そのため、転倒やスポーツによる口腔内のトラブルを防ぎやすく、日常的に運動をする方におすすめです。
裏側矯正には、表側矯正よりも前歯を後方に動かしやすいメリットがあります。
たとえば、前歯が出ている場合、歯を動かすスペースをつくってから前歯を後ろへ動かす治療をおこないます。
ただし、奥歯と前歯が引っ張り合うことにより、固定源の奥歯が前へ動いてしまい、前歯を動かしにくくなる可能性があるのです。
そこで、裏側矯正をおこなうことで、固定源の歯を後方へ引き込めるため、奥歯が前歯に引っ張られるリスクを下げ、表側矯正よりも効果的に前歯を後方へ動かせます。
裏側矯正には以下のような6つのデメリットがあります。
続いて、それぞれのデメリットについて解説します。
裏側矯正では、歯の裏側に矯正器具を装着するため、舌に違和感を感じることがあります。
ただし、矯正器具を装着してから1〜2週間ほどで違和感は薄れることが多く、矯正器具を装着している間、ずっと違和感があるわけではありません。
また、舌に矯正器具が接触して傷つき、口内炎ができやすくなる方もいます。
歯の裏側の矯正器具が邪魔になり、舌を歯の裏側に当てて発音する言葉が発音しづらくなりやすいです。
とくに、さ行・た行・ら行の言葉は発音しづらくなる傾向があります。
ただし、多くの方は数週間ほどで慣れ、発音のしづらさを感じることはなくなります。
矯正器具を装着していると、歯磨きが難しくなります。
そのため、通常の歯ブラシ以外にタフトブラシやデンタルフロスなどを使うことをおすすめします。
とくに、歯の裏側の矯正器具のまわりには歯垢や食べかすがたまりやすいため、念入りにケアしておきましょう。
裏側矯正に限らず、ワイヤーによる矯正方法では、食べものが矯正器具に挟まりやすく、噛みにくさを感じる方もいます。
なかでも、麺類や繊維質の食べものは、矯正器具に挟まりやすいため、矯正治療中はできるだけ控えましょう。
裏側矯正では、矯正器具の製作に時間がかかるため、表側矯正よりも治療期間が長くなる可能性が高いです。
歯科医院によっては、矯正器具の製作に1〜2ヶ月程度かかります。
また、裏側矯正はブラケット間のワイヤーが短いため、ワイヤーがたわみづらく、ワイヤーの調整回数を増すことが必要です。
これも、裏側矯正の治療期間が長くなる原因の1つといえます。
裏側矯正は高度な技術が必要とされる矯正方法です。
そのため、表側矯正に比べて、費用が高くなりやすいデメリットがあります。
矯正器具が目立ちづらいメリットもありますが、ほかの矯正方法と値段を比較してから、裏側矯正を検討してもよいでしょう。
裏側矯正には、フルリンガル矯正とハーフリンガル矯正の2種類があります。
以下では、2種類の矯正方法についてそれぞれ解説します。
フルリンガル矯正とは、上下の歯の両方で矯正器具を裏側に装着して、歯を動かす矯正方法です。
フルリンガル矯正では、矯正器具が目立ちづらいため、矯正器具を目立たせたくない方におすすめです。
ハーフリンガル矯正は、上の歯では裏側に矯正器具を装着し、下の歯では矯正器具を表側に装着する矯正方法です。
下の歯は唇で隠すことができるため、表側矯正よりも矯正器具を目立ちづらくできます。
フルリンガル矯正よりも値段が安くなるため、多少であれば矯正器具が見えても気にならない方におすすめです。
裏側矯正にかかる費用の目安は、以下の表のようになります。
フルリンガル矯正 | ハーフリンガル矯正 | |
全体矯正 | 100万~170万円 | 80万~150万円 |
部分矯正 | 40万~70万円 | 35万~65万円 |
表からもわかる通り、値段を抑えたい場合にはハーフリンガル矯正、矯正器具を目立たせたくない場合にはフルリンガル矯正がおすすめです。
裏側矯正にはさまざまなメリットがありますが、ときにはおすすめできないケースもあります。
裏側矯正がおすすめできないケースとして、具体的には以下のような例があります。
続いて、それぞれのケースについて解説します。
裏側矯正の場合、歯の裏側に矯正器具を装着しますが、舌が極端に大きいと治療の邪魔になることがあります。
矯正器具を装着することはできますが、舌を噛みやすくなったり、舌と矯正器具が接触して傷つきやすくなったりとデメリットが大きいです。
そのため、舌が極端に大きい場合には、裏側矯正が向いていないといえるでしょう。
過蓋咬合とは、かみ合わせが深い状態のことです。
過蓋咬合の場合、上下の歯で噛む際に、歯の裏側に装着した矯正器具が前歯部分でぶつかってしまいます。
ただし、上下の歯を片方ずつ矯正する方法もあるため、まずは歯医者で相談してみましょう。
歯並びの乱れが大きすぎると、矯正治療自体ができないこともあります。
その場合、外科矯正によって顎の骨を切除する治療が勧められます。
外科矯正と裏側矯正を併用することも可能です。
歯並びは顔の印象を大きく左右するため、歯列矯正によって口元を美しくしたいと考える方は多くいます。
また、矯正には歯並びを整えることで日頃のケアが行き届きやすい口内環境をつくり、虫歯や歯周病のリスクを軽減する役割もあります。
しかし、歯列矯正にもワイヤー矯正や裏側矯正をはじめ、さまざまな種類があるうえ、それぞれメリットやデメリット、かかる費用などが異なります。
そのため、歯の状態や予算に応じて、自分に合った矯正方法を選ぶことが大切です。
当院では、小児から大人まで豊富な矯正治療の実績をもとに、一人ひとりの患者さんに合った治療方法を提案させていただいております。
歯列矯正に関して詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。